BLOG店主日記

抜粋 『陶説』636号

献上唐津の胎土は

鉄分の少ない伊万里市南波多町笠椎周辺の白土、西唐津の妙見、呼子町加部島、玄海町有浦等の白土(中略)唐津の神田の赤土で捻物をつくった

『陶説』636号、p13、中里逢庵「最上位稲荷さんと唐人町御茶碗窯」

伊万里市南波多町笠椎

西唐津の妙見

呼子町加部島

玄海町有浦

唐津の神田

ちょうど先日ご来店していただいた明賀亘史さんが、自分のとこの近くでその昔献上唐津の胎土として使われた土がとれるという話をしていた。たまたま陶説で中里逢庵さんが寄稿していたなかに同様の記述を見つけた。

多久高麗谷窯の絵唐津は船鼠の毛で書かれているらしい(p.42)。繊細な細い線がすっと伸びている。今はその船鼠がいないので、この筆は作れないとある。

ちなみに調べてみると、下記サイトによれば、ふなねずみはくまねずみではなくドブネズミらしい。

https://ujsnh.org/activity/essay/wajima.html

加湿器

乾燥の季節、加湿器の季節。

クラヴィコードの過乾燥をふせぐためにも、加湿器は欠かせません。

加湿器はとにかく手入れが面倒で、頻繁にやらないといけないのが大半で、数年前に加湿器というものを使い始めたときから、手入れが簡単、ということを基準に選んできました。

結論から申しますと、性能、手入れの楽さなど総合してダイニチのものが最高です。

一番カンタンなのは象印などの湯沸かしタイプ。しかし電気代と有効面積?がネック。

つぎはVenta。 ダイニチに出会う前にはベンタを使っていましたが、ベンタは一度日本から撤退し、消耗品もいつまで続くかわからないといった状況でした。撤退というか、代理店が本国から契約を解除され、その代理店も事態に混乱している様子で、先行きが不透明だったため、すてました 。

デザインや製品の思想は気にいっていたので、大変残念でした。しかしベンタ、最近調べたらなんか復活してましたね。

ベンタかダイニチかという選択ですが、今年ダイニチが手入れ不要の使い捨てフィルターを発売!!!!

これとかんたん取り替えカバーの併用で、シーズンを通してほぼメンテナンスフリーになったので、これはダイニチを継続するしかないという考えです。

内部のフィルターを洗わなくていいのは、決定的に楽です。

もう2週間ごとのクエン酸(と重曹)の儀式から開放されたのです。

というわけで加湿器のおすすめはダイニチのものです。

吉野敬子さんのこと

5/20に吉野敬子さんがご逝去なさったということを、さきほど知りました。

謹んで哀悼の意を表するとともに、ご冥福をお祈りいたします。

離岸オープンの前、新宿柿傳のギャラリーで初めてお会いして、吉野さんの作陶に対する姿勢や唐津のことなどをお話させていただきました。吉野さんの唐津に対する愛情(一度は自ら離れた土地であるわけですが)をひしひしと感じ、畑の作物を育てるように、という焼きものに対するスタンスも、吉野さんの思想が表れていて感銘を受けました。

あの時が離岸としての作家さんとの初交渉で、緊張しきりでしたが、暖かくお話を聞いていただき、また唐津の作家さんをご紹介してもくれました。離岸のオープンにむけ、様々な作家にコンタクトしては断られる中で、初めてお会いしてくれたのが、吉野さんでした。

その後、吉野さんの櫨ノ谷窯を訪問し、お父様の作品と吉野さんご自身の作品をみせていただきながら、縁側で陶芸のこと、今の日本の文化のこと、唐津のこと、たくさんお話させていただきました。古唐津の陶片を出してきて、ひとつひとつ愛おしそうに眺めながら、嬉しそうに昔の陶工の技を語る様がはっきりと思い出されます。

話し込んでいるうちにだいぶ時間が経ってしまい(櫨ノ谷窯はすごくいいところで、つい長居してしまうようなところです。もちろん吉野さんのお人柄も大きいのですけれど)、次の場所に行く時間になってしまったので買いつけもできず、仕入れなどはまた次回、、といってそそくさと吉野さんのところを辞しました。

その後、買い付けのアポイントを取ろうとご連絡したら、ご体調が良くないということで、来年以降仕事を再開する、とお返事がきました。

インスタなどの更新もあまりされず、気になりつつも、少し待ってみようと距離をとっていました。そのうちにどこかで復帰の展示会などするだろうから、その後でまたご連絡してみようか、なんて考えていました。

結局、吉野敬子さんの作品は離岸では扱うことが叶わず、手元にある吉野さんの作品は、柿傳で求めた茶碗がたった一つとなってしまいました。

吉野さんがいなければ、離岸は(少なくとも)今のようなかたちではオープンできなかったでしょう。僕と離岸にとって計り知れない恩人でした。それに何も報いることができなかったのは(弊ギャラリーに出来ることはたかがしれていますが、それでも、)悔やまれることです。

櫨ノ谷窯に併設されたカフェ、やぎ、畑。お父様がお作りになった茶室(おおらかな腰掛)。半農半陶の暮らし。

もっとたくさんの作品を見たかったし、またお話したかった。

パーフェクト・デイズ

予告編だけで泣けるやつ。ルー・リードと役所広司とヴィム・ヴェンダースなんて、最高でしょ。

福岡の屋台文化

いっとき、福岡市東区に住んでおりまして、天神のあたりもよく行きましたが、天神の屋台には一、二度しか行ったことがありません。

福岡は基本的によそ者ウェルカムな街で、温かいところです。僕の場合は、どちらかといえば一人でいるのを好むため、屋台の距離感の近さ、隣の人と一緒に飲むみたいなノリがそんなに得意ではありません。(たまにそんなモードの時もありますが。)

茶の湯はその点、淡交ですから、いいのです。

でも日本含む東アジア(東南アジア?)の屋台文化は興味があり、なくなってほしくはないと、思っています。

地元住民との関係性のなかでの模索になるのかとはおもいますが、制定された条例が屋台文化にとって良い作用をもたらすといいんですが。

この動画をみつけたのでこのエントリを書こうと思いました。ハートウォーミング。

いのり

色々なうつわをみていると、やっぱり古いものがいい、という気がしてくる。

時の洗礼を受け、かつ時間を経て風格を増したからではなく、

古くて、現代に残っているものは邪念が無い(あるいは昇華されている)ものばかりだから、という思いを持つ。

現代の工芸家は、それこそ西洋近代の個人主義・作家性の思想をベースにしているから(か)、どうしても、自分なりのものをつくろうと、意気込み過ぎている。

それこそ「芸術的」な茶碗なども溢れている。がしかし、それは芸術自体を勘違いもしているし、まして工芸にとっては必要ない自意識である。

個性は追い求めずとも呪縛のように常にそこにあるもので、それをなんとかなだめすかして、一意に、専心して、祈るように、まっすぐに、形作る。

僕はそういったものを好ましいと思う。というのをここ最近、再確認した。

それは外面的な要素にはおよそ関係がない。シンプルなものに祈りがあることもあるし、シンプルなものに祈りの無いこともある。絢爛で派手なものに祈りがあることもあるし、絢爛で派手なものに祈りのないこともある。

祈りのある作家。祈りのある作品。

祈り。それは自分を超えた物に向かって自分を投げ出すという営みである。

そしてもうひとつ大事なのは距離の問題。祈りというのは、同時代性からの剥離でもある。現代にべったりという距離感ではなく、今ここから剥がれ落ちて、それで大きな迂回路を通って、また今ここへと戻ってくる。

祈りという営為とそれに伴う距離の問題。

これは今後離岸として扱う作家の選び方の基本方針でもあるので、ブログというかたちで公開してみた。

村上三和子さんと梶原靖元さんのコラボ展のDMに書いた文章も、結局は同じことなのだ。

自分よりも「大きなもの」があること、そのことを信じている作家。それに向かってゆく作家。

これからも、そういう方々と新しい出会いを持つことができたら嬉しい。

最近のあれこれ

近況といえば、まず、入院ですね。6年ぶり人生2度目。

今回は病室とトイレとお風呂以外、どこも出歩けないのが、きつすぎる。

前回は自由に動けたので、1ヶ月の入院でもなんとかできた。

今回はどれくらいになるかわからないけど、やばい感じがする。今日で3日目だけど、しんどい。

お店をお休みして、皆様すみません。なるべくはやく帰りたいと思っています。

やっぱり1mgとはいえ、プレドニンを飲み続けていると基本免疫が落ちてると実感する。困ったものだ。とりあえず溶血はしていなそうなので、それはよかった。

療養の友としては、『地図と拳』、『鉄鼠の檻』、ドラマ〈戦争〉シリーズ、『書楼弔堂 破暁』など。超魔神英雄伝をみたいけど、サブスクするのをためらっている。

そして目下はShopify のコードを編集している。 商品をカテゴリ別に一覧でみれるのだけど、そこにはfilter と sortという機能がある。フィルタは金額の範囲指定、ソートは並び替え。このソートのアルファベット順(昇/降)を非表示にしたいのだが、苦戦している。

眠いからか、へんな文章だ。

宮迫正明さんの展示会にいってきました

昨日、2022/11/24、銀座の一穂堂ギャラリーで開催中の宮迫正明さんの展示会にいってきました。

新作、素晴らしかったです。

これまでの日本画と異なり、ご自身が収集なさったアンティークの素材などをふんだんにつかったものを支持体として、コレクションと日本画という宮迫正明さんの2つの人生が非常に洗練された形で結晶していました。

単なる平面作品ではなく、かといって立体作品というのも違う、日本画の手法に染色や表装などの技法が加わった独自の作品群は、宮迫正明さんの新境地でありながら、とても自然な佇まいでした。

宮迫さんのコレクション自体も素晴らしかったです。。必見です。