BLOG店主日記

竹下鹿丸(陶、益子)

辺境の南蛮。辺境の白磁。

益子の土は焼締めにはあまり適してないという。だが、鹿丸さんは、益子とその周辺の土で、焼締めのうつわをつくっている。

それだけ聞くと酔狂にも思えるが、作品を見てみると、説得力がある。複雑な窯変は、しかしギラついていなく、静けさがある。それでいて、食欲が湧いてきて、料理を盛り付けたイメージが膨らんでくる。使い手をそんなふうに触発してくれる実際的な作用を持つ。

合計6日間にも及ぶ窯焚き。その間、うつわを熾に完全に埋め、熾を減らして火に当て、また熾に埋めるというのを3回繰り返す。薪も、様々な種類の木を使い分ける。どの薪をどんなタイミングで入れるか、それによって窯変をコントロールもする。

そうした多大な労力と緻密な計算により、鹿丸さん独特の焼き上がりが完成する。

鹿丸さんは焼きものの一大産地としての益子には特別な思い入れはない。同時に他の産地の焼締めや古作に憧れているわけでもない。けれども自分の作品における理想は確固として持っている。

益子で、その土地の土で焼締めや白磁をやるというのは異質であり、だからこそ、そこに鹿丸さんの核心があるように思う。というか、益子という土地と、良い具合の〈距離感〉で付き合うことができている鹿丸さんの生き方(作品づくり)は、わたしたち作品の受け取り手からみれば、恩寵のようにさえ感じられる。

益子という土地(土)なくして鹿丸さんの作品は存在しない。しかし、益子という土地に「へばりついている」というわけではない。益子焼という伝統の枠外で、しかし、確かに益子でしか出来ない作品を作っている。

1977年 益子町生まれ
1996年 茂木高校卒業
1998年 県立窯業指導所卒業
2000年 穴窯を築く
2002年 第4回益子陶芸展で審査員特別賞受賞
2005年 益子陶芸美術館で竹下鹿丸展開催
2006年 第6回益子陶芸展入選