
梶原靖元初となる、書の展示会。
前々から陶芸作品に梶原さんが良寛の経文の一部を、鉄絵などで書いたり、線刻しているのは拝見していて、その字が、なんとも言えず、いいなあと思っていた。2024年の春、梶原さんの窯元を訪ねた。きっかけは忘れたが書の話になり、いくつかの書を見せてくれた。きけば、良寛に私淑して十余年以上、毎晩臨書をしているという。
一見して、陶芸家の余技でないことが分かる。そして良寛を単に写しているのではなく、その字の向こうに透けて見える生き方そのものへと、近づこうとしている。そんな字だった。
僕はこれを作品として見たいとお願いした。展示会をしたいと。梶原さんはまさか本気で言ってるとは最初思っていなかったようだが、書の展示会の許諾を頂けた。
さて、膨大な書のなかから、どれを選ぶか。語句の意味、字、おおきさ。様々なことを勘案しながら、軸装や額装する候補を絞り込んでいった。表具は、以前よりその仕事ぶりに敬服していた京都のお店にお願いした。
茶の湯では古来、掛け軸を「第一の道具」として敬い、特別な地位に置いてきた。字というものが持つ直接性。鍛錬も、その動機としての他人の目を気にする素振りも、どう見られたいかという虚栄も、してやったりという自負も、何を見てきたかという来歴も、作者のすべてが裸にあらわになるのが、書だ。工芸は、多少、自分と作品の間にいくばくかの距離が残る。けれど、書は良くも悪くも、その人の履歴が残酷に見えてしまう。
真面目なだけでもだめで、ふざけていてもだめで、稚気がないと面白くなく、しかし浅薄な作為性は白ける。うまいと言われる字も、それは本当にうまいのか。きれいなだけで、それらしいだけで、つまらない字のなんと多いことか。
とにかく僕は個人的に、道具としての書に困っていた。現代の作家で良い茶碗などはあるのに、それに比して書の貧弱な有様に、簡単にいえば、「買える」書のなかで、良い、と思えるものへの出会いが、あまりに少なかった。
本当に心に響く書に、あるいはもっと素朴に、「なんか気になる」と思わせてくれた書に出会うことの難しさ。出会えたときのうれしさ。
一陶芸家の書が茶の湯の道具としての書足り得るか。陶芸家という職業をみれば、違和感もあるだろう。けれど作家・梶原靖元としてみれば、あるいは(少なくとも僕から見れば)気高い生き方をする(あるいは気高くあろうとする)人間・梶原靖元の書として捉えたら、どうであろうか。
偽りのない字。退屈のない字。すこし恥ずかしげな字。みずみずしい字。麗しい字。純粋な字。奢らない字。茶のような字。真剣な字。「良い字」。
書家ではなく、僧侶でもなく。陶工をはみだして。自由の人として。その字はまっすぐに心を捉える清らかな水であると思う。
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本展では軸装作品と額装作品が出品されます。梶原さんの散文詩、韓国の文人や禅僧の詩、良寛の詩。茶室でも、煎茶、中国茶の席でも、ご家庭でも、オフィスでも、気に入った作品があれば、好きなところにぜひ飾ってください。
弊廊がせまいため、都合により前期後期と作品を(一点を除き)すべて入れ替えて展示をすることとします。ご不便をおかけしますが、白湯でもすすりながら、ゆっくりと見ていただければ幸いです。作品はすべて会期後の発送になります。
是非実物をギャラリーにてご覧ください。
良寛の書「法華賛」に出会い、深く引き込まれました。
日展作家でもある書の先生にお手本をお願いしたところ、先生の返事は次のようなものでした。
「我々俗人に、あの書は書けない。」
京都の書道具店で、良寛さんはどのような筆を用いられていたのでしょうか、と尋ねたことがあります。するとお店の方はこう答えてくださいました。
「きっと、筆先が磨り減るまで、大切に使われたのでしょうね。」
あの魯山人が、良寛のことを「良寛様」と呼んだといいます。
それからというもの、毎日筆を取っています。初めての書の展示、まことにお恥ずかしい限りです。
梶原靖元
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梶原靖元、初となる書の展示を行います。
唐津の陶芸家・梶原靖元は、良寛に私淑し、十年以上にわたりその書の臨書を続けてきました。離岸はその線の魅力に深く惹かれ、本展にて初めて、その書をご紹介いたします。
本展では、自作の散文詩、韓国の禅僧・草衣や文人たちの詩歌、良寛の詩偈など、梶原さん自身が選んだ言葉による書をご覧いただきます。
器において、かたちや土味として現れていたものが、書では言葉の選定、線、墨の濃淡や滲みとして、より直接に立ち上がるようにも思えます。
本展は、梶原靖元という作家の奥にあるものへ触れる機会ともなるでしょう。どうぞご高覧ください。
離岸
展示会概要
梶原靖元 〈書〉
前期|7/4-12、後期|7/18-26
時間|11-17時
休廊|8(水)、9(木)、22(水)、23(木)
作家在廊|7/4,5
※作品は前後期で全て入れ替えとなります。軸装、額装合わせて19点を前期10点、後期9点の予定で入れ替えて展示します。
※価格については額装で10万円台、軸装で約20万円〜が目安となります。詳細はお問い合わせください。遠隔地等の理由でご来店できない方へ、簡易なデジタルカタログもございます。
梶原靖元 陶歴
1962年
佐賀県伊万里市に生まれる
1980年
有田工業高校デザイン科卒業
唐津焼・太閤三の丸窯に弟子入り
江口宗山氏に師事する
1986年
京都・平安陶苑にてクラフトを学ぶ
1989年
京都の大丸北峰氏に師事し、煎茶道具を学ぶ
有田、唐津、京都など各地で修行を重ねる
1995年
佐賀県唐津市和多田にて独立
佐賀県展入選
1996年
淡交社 茶道具美術展「鬼子」入選
1997年
佐賀県唐津市相知町に穴窯を築窯
2000年
アジア工芸展 入選
2001年
佐賀県唐津市相知町佐里に築窯
韓国古窯跡を巡る
2002年
韓国古窯跡を調査
2003年
第100回九州山口陶磁展にて経済産業大臣賞受賞
韓国古窯跡にて3カ月間研修
2005年
中国遼寧省にて地質巡検
NHK「侘びの茶碗をよみがえらせたい」出演
2007年
NHK「美の壺」出演
2009年
「古唐津に魅せられた者たち 9人の挑戦」出品
中国河南省汝窯青瓷古窯跡を視察
2012年
「韓日會寧陶磁展」出品
韓国梁山にて作陶
2013年
韓国通度寺にて作陶
2014年
井戸茶碗古窯跡、白蓮里・頭洞里の原料を視察
2015年
高麗白瓷古窯跡、楊口・驪州を視察
2017年
雲垈里、宝城粉引原料を視察
2018年
黒高麗窯跡、龍山里を視察
2019年
李朝白瓷分院古窯を視察
2020年
西日本新聞にて随筆を連載(全50回)











































































































