先日某所の茶の湯釜工房を見てきました。釜師業界内のバランスとかもあり?、あまり言えませんが、和銑で釜を作っている唯一の工房でした。
千家十職ですら、和銑は使用していません。何が何でも和銑がいい、和銑じゃなきゃ偽物、ということはありません。現に、日本でも確実に和銑、といえるのは江戸くらいまでだそうですから。
和銑は普通の鉄に比べて硬い。なので音が違います。叩くと磁気のような音がします。これはなんか結構感動しました。硬い分、落とすとパリーンと割れるそうです。
あと違うのは、中まで錆びません。和銑は表面だけ錆びる。古い和銑のかけらをみせてもらいましたが、断面を見ると、外側は錆びていても、中はキラキラ、真新しい鉄の輝きでした。
錆びないので和銑のものは数百年は保ちます。錆びて朽ちるということがない。普通の鉄でも数十年から百年くらいは保つのかもしれませんから、和銑の真価が発揮されるのはとても長いタイムスパンの話です。
なぜ和銑がそんなに希少かというと、まず普通のところでは精錬、精製できない。手間のかかる方法で、しかも冬の間しか作れない!ため、商売としては成り立たないのです。
あと硬いために、扱いが難しく、高度な技術が必要です。溶けても流れないそうです。そのため、薄くしようと思えば、割れてしまったり、歩留まりが大変悪い。
一度失われた技術を復興するのは大変です。和銑づくりも、それを用いた釜づくりも、これから先残ってくれるといいなと、微力ながら応援したいと思っています。