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吉野桃李展 

*終了しました

展示会

10/12(土)より、吉野桃李展が始まります。

吉野桃李さんは萩焼に魅せられ、萩の地で長年作陶と探求を続けておられますが、同時に、萩のはじまりである高麗ものに対する想いも強く持っておられます。

唐物の影響を受けた高麗、その影響を強く持つ萩。李兄弟を開祖に持つ萩焼の中には、高麗や唐物のエッセンスが入っています。

吉野桃李さんは、そうした萩の成り立ちに意識的であり、確信的に遡行し、萩のなかで三国を融和させ、萩の正統的な、かつ独創的な解釈で萩の今日を作り出しています。

唐物の持つシンメトリーの美、薄さ(軽さ)の卓越した技巧。高麗の、粉青沙器の親しみと和らぎ、祈りの質感。それらは萩の上品さ、柔らかさ、土の良さのなかでまどろみ、萩のなかでこそ開花しえた自らの別のあり方に重畳している。そんなふうに焼物の一つの桃源郷としての萩を表現しようとなさっているようにも捉えられます。

吉野桃李さんは萩がもつ歴史的なポテンシャルをご自身で解釈し直し、存分に発揮するように多彩な作品を作ります。しかしまた同時に国焼へも興味感心は注がれています。

萩を軸としながら、歴史的、地理的な多くの参照点を束ね、吉野桃李の茶陶を中心とした奥深く静かな作品世界が出来上がります。

その最先端をどうぞご高覧くださいませ。

【展示会概要】
吉野桃李展 
唐物と高麗は萩の夢を見る

2024.10.12(土)~19(土)
※15日(火)のみ休廊
11:00-18:00

・12(土)、13(日) 吉野桃李さん在廊

柔和な肌、高潔で寡黙な形、七色の色彩。

吉野桃李さんの高潔で寡黙な形を見ていると、それは李朝の精神のうつせみのようであり、白磁でなくても白磁以上の高潔さを表現しうるということに気付かされます。桃李不言下自成蹊の言葉通りに寡黙なのは、高倉健のように不器用だからではなく、むしろ、茶入の驚くほどの軽さにみてとれるような卓越した技術を、自己を表出するためでなく、自己の規矩に供するものとして使役しているからでありましょう。

その厳しい途は、愉しさとともにあります。萩らしい柔和な肌と、種々の釉薬と窯変による色彩の官能は、触覚と視覚の快さを与えてくれます。気品と愉楽と柔らかさは萩的でありながら、あくなき対称性への姿勢は唐物的であり、清廉潔白な姿を求める精神は李朝的です。

吉野桃李の眼は、萩の始祖としての高麗、さらに奥の唐物にも向かっており、本来的に萩に内包されているそれらの要素を萩の土の中で浮かび上がらせ、萩の潜在的な可能性を探求しているようです。(部分的に)歴史への回帰というかたちをとりながら、歴史を拡張していく試み。あるいは萩を高麗・唐物・和物のアマルガムとして捉え直す試み。氏の作品は、地理的にも歴史的にも大きなスパンで見られるべきものです。

その探求の最新の記録を、ぜひご高覧ください。